HOME > 土曜セミナーレポート・土曜講座レポート > 社会講座「古文書へのいざない」
夏は「古文書(こもんじょ)」の季節です。歴史家の皆さんは夏の期間に古文書の文献調査に出かけたり、古文書を読みためたりすることが多いのです。この時期に今年も「古文書講座」を実施しました(保護者も参加できます)。「古文書」に触れることで新しい世界と出会うことができます。
まず古文書に関する基礎知識を勉強しました。古文書の多くは手紙形式の書状です。したがって古文書について学ぶと自然に手紙の書き方(作法)の原点を知ることができます。
手紙を出す際は、本紙を封筒に入れますが、昔は懸紙(かけがみ)に包みました。また左端から巻いた本紙の右端に深く切れ目を入れ、できた細い切れ端で本紙を巻いてとめる切封(きりふう)という簡易なやり方も一般的でした。
つづいて古文書字典の使い方を練習しました。字典により構成の違いがあるでしょうが、多くの場合、索引から想定する文字を探し、それに該当するくずし字の用例を確認します。字典を用いて自分の氏名のくずし方を確認してもらいました。
ここから古文書によく登場する文字について確認しました。「御座候」の文末表現、「不」の打消しなど使用頻度の高い文字はとりわけ字体がくずされやすい傾向があります。写真は人名で頻出の「右衛門」「左衛門」のくずし方です。
くずし字の中で意外と判読しにくいのは「ひらがな」です。そもそも「ひらがな」自体が特定の漢字をくずしたものですが、当時は同じひらがなでも複数の漢字をくずす用例があり現代人からすると混乱します。写真は「す」の用例です。
最後に古文書の読解に挑戦しました。最初は検地帳を読み解きました。検地帳は地名・面積・石高・耕作人と記載内容が決まっているため比較的読みやすいのです。その後、ひらがな交じりの書状にも挑戦しました。
古文書を読み解けるようになると、昔の人々との「会話」を楽しめるようになります。そこには現代に通じる社会の問題があったり人間ドラマがあったりします。歴史はいわゆる歴史学だけではなくどの研究分野にもあります。
地震や津波に関する研究でも先人が書き残した文献が見直されています。古文書に親しむことは、我々と昔の知恵をつなぐ出発点になるのではないでしょうか。次回はぜひ皆さんも挑戦しませんか。