夢を夢のままで終わらせないために~社会が求める実行力~
自修館中等教育学校 校長 小河 亨
◆導く先の姿自修館は完全中高一貫の中等教育学校です。人生におけるこの最も多感な6年間に本校の生徒は「子ども」から「おとな」へと成長しなくてはなりません。言うまでもなく、この「おとな」とは、ただ年齢を重ねたことを指すのではありません。さらに、英語や国語、数学といった勉強ができるようになるだけでも物足りません。それは、社会に生きる私たちこそが確たる自信をもって言えることでしょう。まだまだ親もとで守られている子どもたちが、社会人として自らの足で歩んでいくのは、私たちおとなもまだ見ぬ未来の社会です。変化が大きく、先が見通しづらい未来の世の中で生き抜く力を育むことこそが、私たちの使命です。
もちろん、教室の中で学びを重ねることは、尊く素晴らしいことです。知らなかったことを知り、できなかったことができるようになることの喜びは何物にも代えがたく、新たな事柄へ挑戦し、生み出すことへの大きな動機付けとなるからです。また、その経験そのものが、自信と過信の違い、あわせて謙虚さを教えてくれるからです。
ただし、そもそも興味や関心が薄い事柄に対しては、高いパフォーマンスで取り組むことなどできません。また、机上で学ぶ教科教育だけでは、社会の要請に応えられません。
元来、子どもたちが持っている力は大きく素晴らしいものです。私たちはその可能性を信じて疑いません。特に自らの興味や関心から突き動かされるエネルギーたるや目を見張ります。空で円周率を何桁も唱えることができる小学生や、全国の駅名を次々と話すことができる小学生がいることは、その最たるものです。そのような小学生たちの嬉しそうな笑顔が私の脳裏から離れることはありません。このように、興味や関心によって、私たちは学びを深めていくことができます。加えて実社会で活用し、その本質の一端に触れることができれば、より詳細へと目を向けることができるのです。
しかしながら、そのような力を身につけたとしても、実社会でそれを発揮する機会に恵まれるかどうかは別の問題です。高い専門性と高度な技術を身につけていたとしても、人との関わりの中で感謝の言葉のひとつもなければ興醒めです。どれほど社会が進化しようとも、人は一人では生きられないという事実は不変でしょう。だからこそ、他者との関わりの中で愛情や感謝、また責任や尊重の真の意味を知り、学ぶ必要があります。
私たち自修館はそのような学びに偶然性を求めません。また、その本質は教室の外にあります。それが自修館の行事活動であり、部活動であり、探究活動であり、EQ教育であり、何より仲間たちと過ごす日々の生活そのものだからです。
自修館の変わらぬ思いは、前述したことを踏まえ、本校で学んだ全ての生徒が、実社会で充実感を感じながら豊かな人生を全うすることにあります。『明知・徳義・壮健の資質を磨き、実行力のある優れた人材を輩出し、人間教育の発揚を目指す』この建学の精神のもと、伊勢原の豊かな自然の中にある校舎で、笑顔あふれる仲間たちと濃密な時間を過ごしながら、未来に向けての歩みを着実に進めてほしいと願っています。